Alongside は、複数の疾患を同時に抱える患者と、その周りで支えようとするすべての人のためにつくられた、慢性疾患ケア連携アプリです。患者本人、家族である介護者、看護師のケアコーディネーター、そして医師。
今はそれぞれバラバラな情報を、一つの共有されたアプリでつなげます。


慢性疾患の患者が抱えている問題は、治療に関する問題以上に、関係者間での情報シェアがスムーズに行われないという現状にあります。
例えば、糖尿病、高血圧、うつ病を同時に抱える患者は、複数の薬、複数の医療関係者、そして互いに連携しないアプリに日々向き合わなければいけません。
遠方に住む家族が、患者が緊急搬送に至るような状況になっていたことを知るのは、それがすでに起こった後であったりします。
看護師は、数十人分の患者の健康状態をモニターしていますが、その急変が実際にどうして起こったかを知ることは難しいのです。
そして、医師に与えられるのは毎回わずか15分の診察で、前回の診察からの患者の状況を把握した上で、的確な治療を行わななければならず、短い時間の診察だけではそれは難しい状況にあると言えます。

Clinical Workflow Software(臨床ワークフローソフトウェア)領域は、過去12ヶ月間でデジタルヘルス資金調達額9億8,840万ドルを記録してこの分野をリードし、慢性疾患ケアは資金調達の重要なシグナルとして挙げられています。
財務面だけでなく、ヘルスケアUXの研究においても、複数のステークホルダーを対象としたデザインは、いまだ解決されていない最難関の課題の一つとされており、まさにケーススタディに値するテーマでした。
私たちは、初期の仮説を検証する過程で、スマート服薬ディスペンサーは、ニッチな存在であることが判明しました。
スマート服薬ディスペンサーの価格は100〜1,000ドル以上と高く、対象も高齢者ケアや臨床試験に限られていたのです。この気づきが、私たちのドラックトラッキングフローのデザインに気づきをもたらしました。
Alongsideは、「飲まなかった」も「飲んだ」と同じくらい、気軽に記録できるように。「正直な自己申告」を軸に設計されています。
すべてのペルソナは、憶測ではなく、患者に関係する人々の役割が現状どのようなものかについて、公開されたリサーチに基づいています。
慢性疾患を抱える患者は、薬を摂ることについて正確性が必要にも関わらず、ちょっとしたきっかけでそれを忘れてしまうことがあります(例えば旅行に行って薬を摂ることを忘れる等)、そしてそれは数ヶ月かけてせっかく築いた習慣を崩してしまうことがあります。
家族である介護者は、ケアに関する意思決定から日常的に除外されてしまう傾向があり(例えば患者とは同居していない為)、それがすれ違いの原因となっています。
看護師は、限られた文脈の中で全患者の遠隔モニタリングデータを選別しており、それが情報過多の状況を生み出しています。
医師はすでに1日30〜60分をEHR(電子カルテ)に費やしているため、新たに追加される患者データは、認知負荷を増やすのではなく、逆に減らすものでなければなりません。

2型糖尿病、高血圧、軽度のうつ病を抱える。7種類の薬を管理し、3人の医者にかかっている。テクノロジーが苦手なわけではないが、生活のあらゆる部分に関わる疾患のために、別々のアプリやログを使い分けることに疲弊している

遠方に住み、正式な引き継ぎもないまま、なし崩し的にこの役割を担うことになった。求めているのは、解釈が必要なもう一つのダッシュボードではなく、安心感。現状は、何かが起きた後になって初めて異変を知らせる、電話やメッセージだけが頼りになっている。

日々、患者パネル全体を管理し、届いたバイタルや症状の報告をトリアージしている。今日、本当に対応が必要なのは誰なのかを把握する必要があり、そのシグナルを信頼するための文脈もまた必要としている。

マリアを約6週間に一度、1回15分の診療で診ている。必要なのは、生データの羅列ではなく、まとめられた傾向。それによって、診察の時間をデータ収集ではなく、意思決定に使えるようになる。
現在のユーザージャーニーでは、同じ患者を管理する3人が、スムーズに情報を共有できていない状態を明らかにしています。
例えば、旅行中の飲み忘れは、誰の耳にも届きません。
家族(介護者)は看護師や医師がまさに必要としている情報を持っているのにも関わらず、それを共有する手段がありません。
看護師と医師が目にするのは、背景にある文脈を伴わない数字だけです。そして誰もが、週の終わりには少しずつ不安を募らせ、少しずつ蚊帳の外に置かれ、少しずつ本当に大切な兆候を見逃しやすくなっていきます。
このプロダクトのデザインフィロソフィーは、患者に「もっと良いデータを提出するように」と見栄をかかせない、というアプローチを徹底することです。
服薬を飛ばしても、責められているように感じない理由をユーザー自身が選べるようにしています。
一日だけの飲み忘れは、非公開のまま。パターンとして現れたときだけ、フラグが立ちます。
このデザインフィロソフィーはプロダクト全体で一貫しています。なぜならば、義務的と患者に感じさせるアプリからは、本当のデータが集まりにくいからです。
今日の記録画面では、やるべきことを尋ねる前に、まず「今日の気分はどうですか?」という問いから始まります。
5段階の自己診断によって、患者は服薬以外の文脈、例えば、めまい、睡眠の乱れや倦怠感なども書き加えることができます。何一つ必須ではありません。
自己申告が義務のように感じられた瞬間、人は記録をやめるか、正直に回答しなくなる人が多いからです。
プレッシャーの少ない「その他、気になることがあれば」という項目が、患者自身ではわざわざ報告しないような、曖昧なシグナルを拾い上げます。
これは意図的に服薬記録とは切り離されています。
症状のパターンと服薬のパターンは意味するものが異なるため、両者を一緒にしてしまうとその違いが見えなくなってしまうからです。
タスクリストの後に埋もれさせるのではなく、これをはじめに持ってくることで、タスクエントリーというよりも、実際に人に調子を聞かれているように感じるからです。
そこから先のチェックインは1分以内で終わるように設計されています。3つのバイタルのうち2つは、接続された血圧計とCGM(持続血糖モニター)から自動的に同期されます。スマート服薬ディスペンサーとは異なり、これらは本当に一般的に普及しているハードウェアです。手動で確認する必要があるのは、服薬記録だけです。


服薬のリマインダーは、患者たちの正直さを引き出すようにデザインされています。「服薬済みにする」と「今日は完了」は、視覚的に同じ重みを持たせています。
服薬をスキップした場合には、その理由を選べるようにしており、飲み忘れに罪悪感を感じさせず、臨床的に有用なシグナルへと変えていきます。


本人確認は、いかなる健康データの入力よりも先に行われます。サインアップを後回しにするという、モバイルアプリにおける一般的なセオリーからは意図的に外れたアプローチです。
その理由はコンプライアンスにあります。次のステップで扱うのは、実際の健康情報であり、HIPAAのガイドラインは、PHI(保護対象保健情報)を収集する最初の時点で本人確認を行うことを求めており、事後の確認では認められていません。
それ以外のステップは、できるだけシンプルなインタラクションにとどめてあります。その他のオンボーディングはフォームではなく、マジックリンクかワンタイムコードで済むように配慮がされています。




ケアプラン画面には、直近の予約が選択可能なカードとして表示され、日時と担当医が一目でわかるようになっています。
その下にはそれまでの目標や服薬情報がリストされています。カードをタップすると詳細画面が開き、予約に関する情報、日付、担当医、そして診察内容の簡単な要約が表示されます。
「日程変更」と「キャンセル」は分かりやすいように視覚的に分けてデザインされています。
日程調整のピッカーは、「日程変更」がタップされた時点で初めて表示されます。日付と時間の選択は1画面で完結し、自己負担額は予約確定前に表示されます。



介護者には患者の情報を逐一表示するのではなく、安心感を提供することを軸にデザインされています。
数値をそのまま見せるのではなく、シンプルなグラフや「正常範囲内」というシンプルな言葉で伝えます。
患者は介護者に症状を説明する必要はなく、患者にイレギュラーの状況が続いた場合のみ、介護者はお知らせをアプリを介して受けることになります。

優先順位付けされた患者のリストされます。同じシグナルであっても、そのバイタルの文脈によって意味は変わります。原因のわかっている服薬の抜けと、対面での診察が必要な状況の変化とでは、まったく別物です。これにより、看護師はすべてのカルテを開くことなく、数秒でパネル全体を選別できます。

アプリが検知した患者の異常なパターンは、看護師に通知されます。
看護師は予定外の早期受診を促すために患者にメッセージを送ります。

患者は、予定外の早期受診の案内を受け取り、それを承諾するか、都合の良い日時に変更するかを選べます。処方の手続きはその後に続き、登録された薬局で受け取れるようになります。




診察前の患者についてのサマリーは、6週間分のデータをグラフに要約し、「話し合うべきこと」リストへと集約します。
患者、介護者、看護師それぞれから得た情報を統合し、15分間の診察をデータ収集ではなく、意思決定のための時間にします。すべてのグラフはタップすることで詳細なチャートを表示します。医師は迅速に生の数値まで掘り下げられることができます。これは一般的な臨床医向けダッシュボードのデザインに習ったもので、医師のラーニングカーブを軽減します。

Alongsideは、同じ疾患を管理していながら、互いにどれほど助け合えるかに気づいていない4人の間にあるギャップを埋めるためにデザインされました。
Alongsideを使えば、4人の間のコミュニケーションがスムーズに進みます。薬の飲み忘れは、一定のパターンにならない限り誰にも知らされないので、患者は罪悪感も、見栄を張る必要もありません。介護者が持つ患者の状況はアプリを通して介護士へと伝えられます。医師が開くのは、整理されて
いない患者のリストではなく、優先順位付けされたサマリーとなります。
現状分析で明らかになったすべてのギャップ、誰にも気づかれない薬の飲み忘れ、意思決定から締め出された介護者、盲目的に判断せざるを得ない看護師は、それぞれのニーズに最適化された画面から必要な情報だけを確認することができます。
あまり普及していないスマートデバイスによる服薬のトラックを前提とせず、正直な自己申告を前提にデザインすることで、患者が義務的に感じた報告ではなく、実際に起きたことをユーザー自身が正直に報告したデータのみ解析し共有します。
「まずサマリー、必要であれば詳細へ」という2段階のパターンは、患者向けの体調の傾向表示から、医師向けのサマリーグラフまで一貫しています。介護者、看護師、医師。それぞれが、同じ情報であっても異なる伝え方を必要としていることを尊重したデザインです。
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